ジャパニーズウイスキーの定義が決まる

まず、注意事項としてこの記事は2021年2月19日現在にわかっている内容をまとめたものです。今後、修正、変更があった場合はそれが分かるように書き直すようにしますが、割と大きな変更があり得る話題なので、ご注意を。

ジャパニーズウイスキーの定義が決まりました。

現在、世界の5大ウイスキーといえば、スコッチ、アメリカン、アイリッシュ、カナディアンについて、ジャパニーズウイスキーが加わりこれで5大ウイスキーになっていました。しかしながら、ジャパニーズウイスキーについては、他のウイスキー大国とは大きな違いがあって、それは酒税法上の定義がなかったことです。

他のウイスキーについては、自国産の原料を使って、自国で蒸留した原酒のみを使うetcの定義が決まっていて、それを満たさない限りは名乗ることが許されていません。

日本の酒税法の定義では、ウイスキーの定義はあってもジャパニーズウイスキーの定義はありませんでした。その「ウイスキーの定義」も、相当に緩くて総量のうち10%以上入っていれば良い、となっていて、これは原料のうち9割近くが他のアルコールであっても「ウイスキー」を名乗れるという事になっています。

現在、日本のウイスキーは世界的にみても高い評価を受けていて、大きなコンクールで受賞が続いたり、イチローズモルトが競売で高額で落札されたりしています。

そうした高い評価も、低品質で曖昧なウイスキーがジャパニーズウイスキーとして流通すると、いずれは評価が下がってしまうかも知れません。

日本洋酒酒造組合のジャパニーズウイスキーの定義

そうした状況を鑑み、日本洋酒酒造組合は2021年2月16日に「ウイスキーにおけるジャパニーズウイスキーの表示に関する基準」を発表しました。この組合は、全国のウイスキー、ブランデー、スピリッツ、リキュール、甘味果実酒及び雑酒のメーカー82社が加盟する業界団体です。

その中には、サントリー、ニッカ、キリンという大手はもちろん、中小企業も多く、ほとんどの国内メーカーが加盟しています。さらに、税制に対しても業界内の要望を取り上げて、国に働きかけるなど相当な影響力を持っています。

したがって、今回の「定義」はいわゆる自主基準であって、法律ではなく、違反したところで法的罰則などは無いのですが、相当な拘束力はあると思われます。

定義の内容

日本洋酒酒造組合の自主基準は以下のページで確認することが出来ますが、そのうちの特に注目すべき点をまとめてみました。

まずはジャパニーズウイスキーの定義(第5条)

  • 原材料は麦芽、穀類、日本国内で採水された水に限ること。麦芽は必ず使用する
  • 糖化、発酵、蒸留は日本国内の蒸留所で行うこと
  • 貯蔵は内容量700L以下の木製樽に詰めて、3年以上日本国内で貯蔵すること
  • 日本国内で容器詰めして、充填時のアルコール分は40°以上であること。
  • ジャパニーズとウイスキーの文字を統一的かつ一体的に表示するものとして、文字の間を他の用語で分断して表示することは出来ない。

バーボンあたりだと樽は内側を焼き焦がしたホワイトオークの新樽を使うなどの規制があって、この定義よりもさらに厳しいのですが、やっとまあ条件らしい条件が出来たなあ、といったところ。特に3年以上熟成しろという規制が出来たのは良いことです。

そしてこの要件を満たさないウイスキーについては、以下の表示が出来ません。(第6条)

  • 日本を想起させる人名
  • 日本国内の都市名、地域名、名勝地名、山岳名、河川名などの地名
  • 日本国の国旗及び元号
  • 前各号に定めるほか不当に第 5 条に定める製法品質の要件に該当するかのように誤認させる おそれのある表示

ただ、この6条は、5条に定める要件に該当しないことを明らかにする措置をした時はこの限りではない、とあります。つまり、ラベルの裏に「このウイスキーはジャパニーズウイスキーではありません」と明記すれば、日本国内の地名を使えるということです。

例えば、キリンに「富士山麓」というウイスキーがありますが、この銘柄はジャパニーズウイスキーの定義を満たして居ないので、そのままでは売れなくなります。したがって、おそらくはラベルからベル裏に「ジャパニーズウイスキーではない」旨の記述が追加されるだろうと思われます。

他にも様々な銘柄が対応を迫られることになるでしょう。

今後の見通し

この定義(施行)が施行されるのは4月1日からとなっています。わずか1ヶ月半で施行なので随分と急いでいる気がします。しかし、この基準を定めるためのワーキンググループは2016年に発足して、2021年初頭まで議論を重ねてきたそうで、かなり厳しい基準になっています。

経過措置として、2024年3月31日までの間は第5条、第6条の表示をしてきたウイスキーに限り、従来の表示を継続できるようになっています。これはさすがに1ヶ月半で表示の変更を速やかに行えというのはさすがに厳しい(小さなメーカーだと倒産しかねない)ので、まあ当然の措置でしょう。

今後3年以内に、該当する銘柄は表示を変えるなり、終売して新製品に切り替えるなりの作業が行われると思います。

各社の対応

現在わかっている各社の対応

サントリー

サントリーの製品のうち、ジャパニーズウイスキーの定義を満たす銘柄は以下の通りです。

個人的にはオールドがジャパニーズウイスキーだったのにちょっとびっくり。角は違うのですね。

ニッカウヰスキー

同様にニッカウヰスキーは以下の4ブランドになります。

ニッカウヰスキーの公式HPの商品紹介を見ると、赤字で「当商品には、一部輸入原酒を使用しています」または、「日本洋酒酒造組合の定めるジャパニーズウイスキーの表示基準に合致した商品です」という注意書きがそれぞれの銘柄に明記されていて、この基準に対応している様子がわかります。

そこで気になる銘柄を見てみると、カフェモルト、ザ・ニッカ、フロム・ザ・バレルは海外原酒が使われているようです。また地域限定の伊達などはどうなのでしょうか。

キリンディスティラリー

キリンは「富士」のみがジャパニーズウイスキーの定義にはまるようです。「陸」はもともと発売当初から海外原酒を使っていることを明示していましたので、まあ当然入らないとして、「富士山麓シグニチャーブレンド」も海外原酒が入っていたようです。

その他の蒸留所

その他の蒸留所についても、追って様々な形で対応していくこととなるでしょう。

主だった地ウイスキーのサイトを見て回っていますが、2月19日の段階では、ニッカのように表示を明記したサイトは見当たらないようです。ただ、むしろ小さな地ウイスキーの蒸留所の中には、例えばイチローズモルトのように真摯にその中身についてアナウンスをしてきた存在もあり、一概に大手だから対応が優れているとも言えません。

個人的には

個人的には、別に国産原酒にこだわっていて、海外産の原酒が入っているからだめだ、というつもりはありません。確かに海外のバルク品の中には低品質なものもあるようですが、それを「掴まされない」ようにしっかりと良いものを買ってくるのも、それぞれの蒸留所の仕事になるのだと思います。

大手メーカーについては、サントリーは米国のビームス社を傘下におさめて現在はビースサントリーになっているほどで、ここでアメリカだけではなくスコッチ、アイリッシュ、カナディアンなど数多くの蒸留所を抱えています。

ニッカも同様で、89年にベンネヴィス蒸留所を買収してすでに30年を過ぎているほどで、その原酒はかなりニッカの製品に流れてきているようです。

こうしたことは、いわば子会社の原酒を使っているのだから特に問題とすべきでは無いでしょうし、消費者がそれと分かって買う分にはそれで良いのでしょう。

またブレンデッドウイスキーの場合はグレーンウイスキーをブレンドするのですが、小さな蒸留所だとモルトとグレーンの両方を自社で用意するのが困難な場合がおおいです。スコットランドのように、資本系列を超えて原酒の売買が出来れば良いのですが、日本では基本的にそうしたマーケットは無いのが事実。

サントリーの知多蒸留所や、キリンの富士御殿場蒸留所のようにグレーンウイスキーをたくさん作っている蒸留所から地ウイスキーのメーカーに原酒を供給すれば良いのですが……。

ただ、地ウイスキーにとっても、要するに「ジャパニーズウイスキー」と名乗らなければ、別にブレンデッドウイスキーは売れるのだから、無理をする話ではないでしょう。

むしろジャパニーズウイスキーの表記にこだわりすぎて、生産量が激減したり価格が上がったりするほうが、消費者にとってはマイナスが大きくなります。

消費者が(特に海外の愛好家が)、「ジャパニーズウイスキー」と誤認して、それほどでもない品質の商品を高く買ってしまうのが問題なのであって、そうした誤解を招きかねないような製品を駆逐する役に立てば、この定義(表示基準)は大成功でしょう。

そして次の段階では、酒税法のウイスキーの定義をなんとかもう少し厳しくすべきですね。名前を出して悪いのですが、TOPVALUのWHISKYは、ラベルに「モルト、グレーン 10%以上 スピリッツ90%未満」と書かれていますが、酒税法の規制ギリギリしかウイスキーを配合していないということですね。これだと多分、10.1%とか10.2%とかそんなレベルなのじゃないかと思わされるぐらいで、ウイスキーを1割程度しか使っていないのに、銘柄名自体がWHISKYというのはあんまりだとおもいます。

こうした製品はさすがに海外では流通していないでしょうから構わないのかも知れませんが、やはり少しでも良い品質のものを購入したいですね。


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