スコッチウイスキーとは

スコッチウイスキーとは、英国のスコットランドで製造されるウイスキーを指します。ウイスキーと言えばスコッチと言われるほど、酒類も豊富で品質も高いものが揃っています。

世界のウイスキーの生産量の7割を占める存在であり、世界の5大ウイスキー産地の一つですが、その中心とも言える存在です。

スコッチウイスキーの歴史

スコッチウイスキーが始めて歴史に登場するのは、1494年のスコットランド王室の出納記録に残っています。当時は修道院が薬酒として造っていたか、農民たちが自製していました。

始めてウイスキーが課税されたのは1644年。1707年にはスコットランドがイングランドに併合され、ウイスキーに対する課税は重くなっていきます。そのため、密造がさかんになっていき、山の中で作られるようになります。

こうした密造酒は出荷が政府の目を盗んで行うため、いつになるのかわからないという事情から、樽に入れて保管することになりました。これが樽の香りが移って、ウイスキーをより芳醇なものにし、且つ美しい琥珀色を得ることに役立ちました。

1823年はウイスキーの歴史にとっておおきな意味のある年で、この年に酒税法が改正され、税率が引き下げられることになりました。これは当時の英国王ジョージ4世が三ツ城業者ジョージ・スミスのウイスキー「ザ・グレンリベット」を愛飲していたため、王が密造酒を好むことが有ってはならないので、密造の原因となる税率を下げた、と伝えられています。

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実際には、当時のスコットランドのウイスキー生産の半分以上が密造酒だったらしく、高い税率を掛けても結局、税を集められないのなら、税率を下げてキチンと集めたほうが有利だと考えたのでしょう。

この酒税法引き下げの立役者は上院議員のアレクサンダー・ゴードンで、彼は小規模な蒸溜所でも許可が下り、且つ税率を下げる税制を提案し、その結果、ザ・グレンリベットは最初の政府公認の蒸溜所となりました。

そのため、ジョージ・スミスは密造業者からは裏切り者扱いされて、命を狙われたということです。しかし、流れは確実に変わり、1820年代だけでおよそ250もの蒸留所が生まれ、同時に生産方法の革新も起きました。

1826年にロバート・スタインが連続式蒸留器を発明。さらにこれをイーニアス・コフィが改良してコフィ・スチルを完成。それまでの単式蒸留器に比べて大量生産が可能になりました。

ローランド地方の生産者は連続式蒸留機を活用し、さらに原料を大麦からトウモロコシなどの安価な穀物に切り替え、いわゆるグレーンウイスキーを作り始めます。一方、ハイランド地方の生産者は大麦麦芽を原料にした単式蒸留器を使う方法を維持し、モルトウイスキーとして精算し続けました。

そして、1853年。エジンバラの酒商アンドリュー・アッシャーが熟成年の異なるウイスキーを混ぜ合わせることを考案。さらにモルトウイスキーとグレーンウイスキーを混ぜて作るブレンデッドウイスキーを発明します。

ブレンデッドウイスキーはより味わい深いけど癖のあるモルトに、飲みやすいグレーンを合わせることで両者の長所が合わさり、また供給が安定し、価格も抑えられることから大いに普及します。

1870年代、ヨーロッパではフランスのぶどうが虫害によっておおきな被害を受け、ワインとそれを蒸留するブランデーの生産が激減。これをきっかけにブレンデッドウイスキーがロンドンから始まりイギリス全土に普及していきます。

この頃、グレーンウイスキー業者6社が共同設立したDCL社（現ディアジオ社）はスコッチ・ウイスキーの輸出を始め、世界市場に地位を確立。1890年代頃にはスコッチウイスキーの第一の繁栄期と呼ばれる好景気がやってきます。

この時期に多くの蒸留所が新設されますが、その結果、供給過剰になって1898年に大手のパティソンズ社が倒産。一気に不景気に突入してしまいます。この時期に設立された蒸留所は多くが稼働開始数年で売却されてオーナーが変わるという憂き目を見ています。

しかし、生産調整がなされ、市場も復活していくに連れ、生産量も増加。特に1913年にティーチャーズが木製の頭部が付いたセルフオープニングボトル（コルク栓）、1926年にはホワイトホースが金属製のスクリューキャップを発明して、一度に全部飲み切ることの無いウイスキーに向いていることから、大いに販売量を伸ばすのに役立ちました。

1920年。アメリカ合衆国で禁酒法が施行され、これがスコッチウイスキーにもおおきな影響を与えました。基本的にウイスキーはごく一部のアメリカで生産されたものが薬酒扱いで薬局で売られる他は販売禁止となり、密造酒が出回りましたが、そうした密造はアメリカ国内の話しでスコットランドの蒸留所は大打撃を受け、閉鎖に追い込まれたところも少なくありませんでした。

1933年には禁酒法も廃止されますが、程なく今度は第二次世界大戦が勃発。これもスコッチウイスキーにはおおきな危機でしたが、ここでイギリス政府はウイスキーの輸出を積極的に推し進め、特にヨーロッパ戦線に出兵してきた米兵の間でウイスキーが愛飲されるようになると、戦後彼らが復員して、アメリカ本土にもウイスキー熱が広がりました。

戦後の1950年代はアメリカの黄金時代で、ここでスコッチウイスキーは親しまれて、大いに消費を伸ばしていきます。アイリッシュウイスキーはかつてはスコッチウイスキーと肩を並べる存在でしたが、この戦時中～戦後の販売戦略に失敗して、大いにシェアを落としてしまいました。

こうしてウイスキーと言えばスコッチという時代が続き、日本でも高級洋酒と言えばスコッチウイスキーという時代が訪れます。

1980年代に嗜好の移り変わりから、消費量が低迷したものの、2000年前半に、それまでのブレンデッドウイスキー主体の販売戦略から、シングルモルトを押し出す戦略に変更したのが当たって、ブレンデッドウイスキーよりも高単価なシングルモルトが好調を維持し、現在までつながっています。

今では、ウイスキーはスコッチウイスキーだけではなく、世界各地で作られるようになり、中にはスコットランドに肩を並べるものも少なくありませんが、全体的な量はやはりスコットランドが圧倒的で、稼働している蒸留所も100を超えるという盛況ぶりです。

スコッチウイスキーの分類

ブレンデッドウイスキーとシングルモルトウイスキー、ヴァッテッドモルト、ボトラーズ

ブレンデッドウイスキーとは、様々な蒸留所で作られる原酒をブレンドし、一つの銘柄として完成させていくという手法で作られたウイスキー。そのブレンドの責任者はブレンダーと呼ばれ、様々混ぜ合わせることで一般的には飲みやすく癖の少ない仕上がりになります。また供給が安定的になる、価格が抑えられるなどの美点があり、現在、普通の方がスーパーなどの酒類の棚で見かけるウイスキーはほとんどがブレンデッドウイスキーになります。→ブレンデッドスコッチウイスキーとは

それに対し、シングルモルトとは、一つの蒸留所で作られた原酒のみを混ぜ合わせて造ったもので、一般的には個性が強く、ときに癖のある味わいになります。価格もブレンデッドウイスキーに比べると高めで、且つ小規模な蒸留所のシングルモルトは入手困難であったりします。→シングルモルトとは

基本的に、ブレンデッドウイスキーのメーカーの方が売上が大きく資本力があることから、そのメーカーが蒸留所を自前で建設したり、買収したりして、自社で蒸留所を持っているケースも少なくありません。そうした場合、その蒸留所の原酒はブレンデッドウイスキーの主要な原酒（キーモルト）としてほとんど使われてしまい、シングルモルトがほとんど市場に出回らない……ということにもなります。

ヴァッテッドモルトは、複数の蒸留所で作られたモルトウイスキーをブレンドして作られたものを指します。シングルモルトは一つの蒸留所、ブレンデッドウイスキーは複数の蒸留所のモルトとグレーンのブレンドなので、その中間に位置するモノと言えるでしょう。ヴァッテッドモルトは数は多くないですが、面白い試みとしていくつかのメーカーがチャレンジしています。→ヴァッテッドモルト（ピュアモルト）

その他、スコットランドにはボトラーズ（瓶詰め業者）と呼ばれる業者も存在します。シングルモルトが蒸留所がウイスキーの蒸留から熟成、ボトリングまで全て行うシングルモルトに対し、ボトラーズは熟成させている原酒を樽ごと購入して独自に瓶詰めを行い販売しています。

その場合、ボトラーズの独自コンセプトで作られるので、オフィシャルのシングルモルトに比べて味わいが大きく違ったりする可能性もありますが、オフィシャルを販売しない、或いはほとんど市場に出回らない蒸留所の銘柄を楽しむには、ボトラーズのものを入手するしかない場合もあります。→ボトラーズ

ウイスキーの蒸留所の地域による違い

一概にスコッチウイスキーと言っても、スコットランド国内のどの地域で作られたかによって、性格や味わいが違う場合が多く、いわゆる「通」はそれを気にします。

一般的には以下の6つの地域に分類されていることが多いようです。

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